■映画館通いのすすめ。シアターN渋谷(2007.08.19)

今更言うまでもないことだけど、やっぱり映画館で映画を見るというのは、
とても贅沢で素敵なことだと思う。

ここ数年、子育てに追われ、映画を見るといえば、
うちの天井にとりつけたスクリーンを引きだし、プロジェクターで見るパターンが多かった。


「独りシアター」ってな感じです。
それにしたって、子供達が寝静まり、家事や仕事の合間を縫って見るものだから、たくさんは見られません。

しかも、家で見ると、よほど体調が良くないと、ついソファーでうとうとしてしまうのです。
「うとうとする映画=つまらない映画」ということもあるのかもしれませんが、、、。
特に、デプレシャンやオゾン監督のものは、気合いを入れないとだめかもしれません。

そこで、今回の原稿を担当することになり、主婦としてはちょっと冒険気分で、
行ったことのない渋谷のミニシアターに出かけてみました。

しかも、レイトショー。ダンナに子供を預ける予約を取り付け、わかりにくい道を人に聞きながら迷いに迷っての到着でした。

無事たどり着いた映画館は、「シアターN渋谷」
「えっ?こんな普通のビルの2階に映画館があるの?」って思ってしまうような場所にひそかに存在するミニシアターでした。
なんとなく、大阪の国名劇場を思い出させる小さな小さな劇場。
でも、椅子はふかふかで広くてゆったり。とても清潔でした。

何を見たかっていうと、どうしてもどうしても見たかった
1992年アメリカ、監督・脚本アレクサンダー・ロックウェルの「イン・ザ・スープ」です。

 映画作りの夢を抱く貧乏な青年・アドルフォ役の若い「スティーブ・ブシェミ」と、
 アドルフォを支援しようと言いつつ、はちゃめちゃな言動で引っ張り回す初老のジョー役「シーモア・カッセル」。

 そして、アドルフが憧れる女性役には、インディペンデント映画界のマドンナ「ジェニファー・ヴィールス」が
 庶民的で一癖ある美女を演じ、聞いただけでもこれはおもしろそう!っていうキャスティング。
 日本での上演は2度目のようです。確か、、、。
そしてオダギリジョーは、この映画中のジョーから芸名を取ったということです。

さて、小さな劇場なので、一番前のど真ん中に陣取り、ふかふかの椅子に身を沈めて上映を待ちました。
ブザーが鳴り、場内が真っ暗になり、映画が始まる。その瞬間だけでもわくわくして、、、。

久々だったからでしょうか。シアターN渋谷の雰囲気と、そこに来ていたお行儀のいいお客さんと、
ユーモアあり涙あり、大人のメルヘンを描いたような胸がきゅんとなるような素晴らし い映画「イン・ザ・スープ」と、、、
全てが上手くマッチして、上映の間中とても居心地が良かったです。

私にとっては、再び映画館に通う愉しさを思い出させてくれた夜になりました。
今年はいろいろな映画館で良い映画をたくさん見たいなー。


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■ロッタちゃんのお引っ越し(2007.08.10)

北欧の童話には、ありふれた日常をいきいきと表現した作品がたくさんあります。

絵本ではシュタイナー教育でも推奨のエルサ・ベスコフや、
トーベヤンソンによって作り出された、不思議で優しく、そして誰もが憧れる、ムーミン谷の物語。

そして、子供のピュアな心を通して、北欧の日々の暮らしを描き続けたリンドグレーン。
ロッタちゃんシリーズは、「長靴下のピッピ」でお馴染み、リンドグレーン原作の、
スウェーデンに住む普通の家族の普通の毎日を題材にした心温まる作品です。



この映画で、なんといっても注目すべきは、ロッタちゃんのかわいさ。
パツンと切りそろえた短めのショートボブに、子供ならではの愛くるしい表情。
そして不可能を可能にしてしまう芯の強さ。

わがままだったり、言い出したら聞かないところは、みんなが知るところですが、
そんなロッタちゃんの言動を、家族や周りの人々が、とても暖かく見守ってくれているところも、ほっと和めます。

「子育てはみんなで。」そんな北欧の大らかでナチュラルな社会観が伝わってきて、
いつもは子供に怒鳴り散らしている私も、ちょっと優しくなれるような、、、そんな暖かい映画でした。

そして、北欧といえば、インテリア。今ではブームを通り越し1ジャンルを築き上げたイメージがありますが、
この映画の中で見られるのは、あくまでも田舎の素朴な一軒家の様子。

それでも、、、きれいに片づきすぎず、子供のいる空気が伝わってくる暖かい部屋は、
季節の行事に彩られ、参考にしたいアイディアが盛り沢山です。




子供って、時々大人には想像もできないようなことをします。
自分もいつ頃かまでは同じだったんだけど、、、。



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「MARIE ANTOINETTE」-KCC映画クラブによせた原稿-(2007.03.05)                                 
2月に新しくできたばかりの映画館、「新宿バルト9」に映画クラブ(KCC)・原稿提出日ぎりぎりの3月5日、朝一番で見に行ってきました。
今月のこの一本に、 マリー・アントワネット を選んだ際、クラブのメンバーからは、かなりブーイングがあったと聞いたけど(おじさまが多いクラブですので)、私が選ばなくちゃ誰が見る?ってくらいにKCCにはうけいれられそうになかったので、あえて選んでみました。ごめんなさい。

そもそも、去年の暮れ、いち早く見たフランスの友人が、「もう、最悪〜。途中で寝たわよ。どうなの、キルスティン・ダンスト〜。」と、憤慨した様子だったことに始まり、神戸のM氏も、「キルスティン・ダンスト、きらいやっ。私は嫌いですう〜。」とおっしゃるし、私も初めて女性雑誌の表紙で、頭を高く結ったキルスティン・ダンストのマリー・アントワネット姿を目にした時、「ええ〜っ!!イメージが違いすぎる。私が小さい頃から想像してきたベルサイユのバラのマリー・アントワネットは、こんな男顔じゃないのに〜。」という思いでした。
そう言われてしまう所以の一つとして、日本人にとっての白人のかわいくて美人な顔のイメージは、キルスティン・ダンストの顔とあまりにも違うように思うのです。なので、超有名なお目目ぱっちり色白のあのマリー・アントワネット役が、ダンスト〜?って風に驚く人も多いはずなのです。
でも、、、私にはなんとなくわかります。ソフィア・コッポラが彼女を選んだ訳が、、、。 だって、これは歴史映画ではなく、わけもわからず幼くしてフランスに嫁いだ独りの女の子のお話。
全体の色は、ソフィア曰く、「マカロン色」。淡くてスモーキーなピンクやブルー、ピスタッチオ色は、これまでの歴史映画の渋くて暗いイメージを覆し、クールでポップで、おしゃれな世界にまとめてるのですから、ここにお目目ぱっちりな、まさに実物のマリー・アントワネットのイメージに近い女優さんが(例えば、ケイト・ウィンスレットとか、若かりし頃のエマニュエル・ベアールとか。)セットされると、ジェームズ・アイボリーの世界になってしまうのではないかと思うのです。
あえて、キルスティン・ダンストのような、日頃から現代的な作品に出ている女優さんを使うことによって、ソフィアのイメージは確立され、本物のヴェルサイユ宮殿をバックに、思う存分好きな音楽を散りばめて、映画作りを愉しめたのではないでしょうか。(、、、とはいっても、子役時代から大活躍のキルスティン・ダンスト。「インタビューウィズバンパイア」では、まさにマリーアントワネットの子供時代をイメージさせるような長い巻き毛にお目目ぱっちりで最高に可愛らしかったです。余談でした。)

見る前から雑誌で情報を目にしてしまったり、噂を聞いたりと、かなりあれこれ想像を膨らませることになったのですが、実際に映画が始まると、いろんな疑問や迷いは吹っ飛んで、綿菓子みたいに白くてほっぺがピンク色の、初々しいキルスティン・ダンストに釘付けになりました。

ドレスのセンスもさすがです。
特に、ぺらぺらの白い寝間着と、オーストリアをでる際に着ていたベルベットの淡いブルーグレー色のドレスが超好みです。
朝起きて、淡々と身支度を済ませ、パグ犬のモップスと家を後にする王妃。犬を抱きながら眠るあどけない寝顔は、これまでの時代物に出てくる王妃と違って、妙に親近感が持てました。
なので、フランスとの国境で丸裸にされ、犬も取り上げられ、フランス側に入る場面では、早くもホロリときてしまいました。さぞかし心細かっただろうに。



























そしてそして、はた目には楽しそうだけど、孤独を感じる毎日。
ソフィア・コッポラの映画の主人公はいつだって、孤独を感じている、大人になりきれない少女のことが多い気がします。
一見、「ロスト・イン・トランスレーション 」(←このサントラも超おすすめ)とはまるで違って見えるけど、結局、ソフィアが描いたのは、スカーレット・ヨハンソンと同じ、人生に悩みながら生きている独りの寂しい女の子。結婚、出産、育児を通し、生活のスタイルや着る物も変え、日々、泣いたり笑ったり。
マリー・アントワネットという有名な名前を借りてはいるけれど、私の人生と何も変わらないような錯覚さえ起こしました。

賛否両論のこの映画ですが、マリー・アントワネットが処刑された歳と同じ、37歳の今の私には、ソフィアコッポラの思惑通り、マリー・アントワネットが今に生きる一現代女性として映り、いろんな意味で、共感が持てました。



そして、マリー・アントワネットはさておき、なんといっても、一番羨ましいのはソフィア・コッポラ監督自身。
彼女こそ、みんなの注目の的で、やることなすこと大当たり。
現代のファッションリーダーというところでは、アントワネットに一番近い存在なのかもです。


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